半農半X インタビュー vol.1

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【半農半X(はんのうはんエックス)とは】

自分や家族が食べる分を自給するための小規模農業を営みながら、空いた時間をやりたいことに使うライフスタイル。約30年前に提唱されてから少しずつ認知度を高め、「多様性の時代」といわれるいま、ますます注目されている新しい生き方です。

上野 ⚪︎⚪︎さん PROFILE

豊岡市竹野町在住の39歳。
14年間のJA在職中にコウノトリ米の販路開拓、米穀事業、営農相談員などを歴任。
北前館への転職を機に半農半Xに取り組み、竹野はもちろん地域全体への愛満載で奮闘中!

アグリスタート
今回、”こんな方が新しい農業のやり方でやっておられますよ”というのを多くのみなさまに知っていただき、「農業をやりたいな」「でもガチンコの農業って難しいぞ」と考えておられる方の気づきだったり、仲間づくりのきっかけになったらいいなというわけで、半農半Xのインタビュー企画をスタートすることになりました。上野さんはその第1回です。どうぞよろしくお願いします!

上野さん
こちらこそよろしくお願いします。 基本的にいまは北前館が生活の基盤なってるんで、思い描いてるところにはまだ行ってないっていうのが正直なところです。 9時から17時のフルタイムですからね。本来なら農業と北前館を半分ずつくらいでできたらベストなんですけど、そこは壁でもありますね。

アグリスタート
いま、お仕事と農業の割合ってざっくりどんな感じですか? 8:2くらいでしょうか?

上野さん
そうですね、農業2ぐらいじゃないですかね。

アグリスタート
いい感じですね。

上野さん
はい。 で、まあ休日もね、ある程度”この時期に⚪︎⚪︎をしなきゃいけない”っていうのがあるんで、そのタイミングで休みを入れてその作業に充ててるっていうような感じですかね。

アグリスタート
北前館さんのお仕事がメインで、フリーな時間を使って農業をされているっていう感じですね。

上野さん
そうですね、いまはそういう状況ですね。

アグリスタート
やっぱり天気とかベストなタイミングでというのはちょっと悩みどころではありますよね。

上野さん
ありますね、悩みとしては。はい。

アグリスタート
いつ頃からいまのスタイルにシフトされましたか?

上野さん
2017年ですね。

アグリスタート
長い! もう10年くらいになられるんですね。

上野さん
約10年です。 まあ元々うちは農家じゃないんですけど、JAに入ったのがきっかけで。「やっぱり農業をやらなきゃダメだよね」っていうのは思ってました。 で、お米を売ったり、2年間アメリカにいたり、そのほかにもいろんな環境下で農産物を販売する中で、「農業には価値があるぞ」と。「自分たちもやらなきゃ」という思いがつのっていったと思います。

アグリスタート
なるほど。始まるべくして始まった半農半Xという感じがしますが、いま農業ではどんなことをされていますか?

上野さん
お米とピーマンです。集落営農にも入って、お手伝いとして入らせてもらってるお米が6反、個人が2反ですね。 だからまあ、竹野でやってるのは8反です。

アグリスタート
結構大きい! 頑張ってますね、すごいな! ピーマンの方は1反くらいですか?

上野さん
いや、ピーマンは1アールですね。

アグリスタート
1,000。

上野さん
そうそう、1,000です。

アグリスタート
そのような取り組みに関する技術や知識を体得するにしても、農地の確保や農業機械の資材を調達するにしても、相応にお金がかかるかと思います。込み入った話ですが、そのあたりはどのように工面されていますか?

上野さん
調達といえば、家に小豆みたいなのがあったんですよ。 小ちゃいやつ。 あれから始まって。 あれでね、畝立てるのめちゃめちゃ大変なんですよ(笑)。 たまらんくなって、JA の農機センターの方にたしか10万円で「畝盛りくん」を購入させていただきました。そこでなんとかピーマンできるようになったって感じですね。 小豆の畝立て、本当にもうね(笑)

アグリスタート
大変! 思うようにいかない! 手も疲れてきますしね。

上野さん
そうそうそう! トラクターで畝なんか起こるわけもないし。トラクターないです、うちは。

アグリスタート
ああ、それは集落営農で?

上野さん
集落営農で借りてますね。 田んぼというか畑用で使ってる管理機は持ってるんですけど、すごい昔のやつですよ。 2万円くらいで買いましたね、あの手でこう回すやつ。ヤンマーの。

アグリスタート
ありがとうございます。その反面で、北前館でのお仕事はどのようにされているんでしょうか?

上野さん
北前館では、会計的なのをちょっと見させてもらってる感じです。 お金の管理と、あとはお風呂のオープン準備ですね。 清掃して、ポンプとボイラーのスイッチ入れて、お客様に入っていただく準備をするという感じかな。 あとは交代で店番もしてますね。 あ、SNS なんかもちょっとやってます。

アグリスタート
北前館のお仕事はどのように見つけまられましたか?  現状のバランスまでたどり着くまでの経緯を教えて下さい。

上野さん
もともとJA 時代から、やっぱり竹野町でというかね、自分の地元で何かしたいっていう思いがすごく強くありました。毎年1回書く異動願いに、「竹野に行きたい」「竹野で営農指導をやりたい」と。それこそ10年以上ずっと書き続けてたんですけど、なかなか叶いませんでした。そんなとき、シーサイドホテルで社長をしてた同級生から「一緒に農業をブランディングできないか」という話があったりもしたんですが、これも実現には至らなかったんです。 “それでも竹野で何かしたい”と北前館に相談してみたら、まあトントン拍子っていう感じですかね。

アグリスタート
ありがとうございます。 ここでもう1度込み入った話で恐縮ですが、いまの収入面を含め、上野さんの目標と現在地に照らしてどの程度の満足感をお持ちですか?

上野さん
夢を志す方や半農半 X を目指す方にどう聞こえるかはわかりませんが、月収をどうにか改善していかなきゃいけないっていうところで、いま正直いちばんしんどいですね、僕は。ただ、動かなければ何も生まれないですし、文句言ってても何も変わらないので、とりあえずもうやることをやるっていう感じでいまは動いてます。

アグリスタート
そのあたり、ご家族の理解や応援が必須なんじゃありませんか?

上野さん
奥さんと子供が2人いてますけども。 奥さんの協力があるからできてるところはあると思いますね。 うん。 じゃなかったら多分、JA辞めるときに反対されてると思うんでね。

アグリスタート
半農半Xを決断をされたとき、ご家族の反応はいかがでしたか?

上野さん
どちらかといえば放任的な感じだったと思います。「 1度しかない人生なんだから」「やりたいことをやったらいいんじゃない?」っていう、まあ背中を押してもらった感じですかね。

アグリスタート
いざ人生を変えたとき、心の解放というか、いままで見えなかった景色があったんじゃないかと思います。心境の変化であったり、決断してよかったこと、不安なことなど、上野さんのここまでを振り返ってみて思われることはありますか?

上野さん
そうですね、違う環境に自分を置いたからこそ、もう何も怖くないというか、もう次から次に「大丈夫だ」っていう感じですよ。実際ね、農業はやればやるだけ自分に返ってきますし、副業もやれてますしね。古物の免許も取って市場で販売もやってます。ほんといろんなことができるんですよ。 つい先日は大阪で作業用重機の免許も取ってきました。これで冬には除雪車を運転できるわけです。 だから選択肢が広がってるというか、どんなことでもできるっていうのがいまいちばんの強みじゃないですかね。 企業や組織にいると、絶対にここまでできなかったと思います。

アグリスタート
いろいろな収入の柱を作って、目指す収入に近づけていこうというスタイルですね。

上野さん
そうですね、はい。

アグリスタート
ほんとうに素晴らしいと思います。

上野さん
それこそ探求学習なんかもそうじゃないですか。 あれもね、まさかあんな大きい学校さんが何校も来て下さるとは思ってもみなかったですし。しかも農業メインで来たいっていう学校さんがおられたりとか。やっぱりね、先人の方々が作られてきた農業が、昨今の”令和の米騒動”ですごくフィーチャーされるようになって。農業を学びたい方が増えているっていうのを肌感で感じる中で、僕には2017年からやってきた「10年の絶対値」があるのでね。そういうところにも話ができるかなというのはあります。やってきてよかったなと思いますよ。

アグリスタート
これから先、どんなふうに農業に取り組んでいきたいですか? 夢や目標を教えて下さい。

上野さん
そうですね。いちばんの夢っていったら、竹野で、見える範囲は自分たちで携わっていくことですね。それがいちばんの夢であり目標やと思います。

アグリスタート
たとえば法人化であったり、面積を大きくしたい、ブランディング、収益、地域の方々との交流など、現時点で色濃く出てるビジョンはありますか?

上野さん
いまはそうですね、 でもほんとうに地域との関係性じゃないですか、やっぱり。 竹野は大規模化に向けて農地集約っていうのがもう決まってまして、これから先の15年くらいで、おそらく農地がどんどん大きく区画整備されていくんですよ。そのときまでに僕がいま入ってる集落営農が法人になって、それを引き受ける流れになってくるとは思うんですけど。 そこで先陣を切って立ってるのが僕なのか、もうちょっと上の人たちなのかわからないですけど。 でも、僕を含めそういう人たちがね、これから先の竹野の農業を守る道筋を作っていきたいと思ってます。

アグリスタート
素晴らしい! ところで上野さん、農業の繁忙期ってやっぱりあると思うんです。田植えにしても苗出しにしても、ピーマンとかもね、毎日採りに行かないと赤くなっちゃうとか、水やり、肥料やり、いろいろありますよね。そういうときってどうやりくりされてますか?

上野さん
早め早めにやるっていうのはありますね。いざというときに雨が降ることはどうしてもあるので、やっぱりちょっと早めに起こしておくとか、畝を立てておくとか、そういうことはまあ意識しなきゃいけないなとは思いますね。 で、僕はあまり家族に手伝ってもらったりとかはあんまりしてないんですよ。 あまりこう押し付けてしまうのも悪いかなと思うんで。自分が好きなことやってるんでね。 まあでも母親なんかはね、ちょっと手伝ってくれるようにはなりましたね。

アグリスタート
自分で作ったピーマンとかお米とかって食べられたことあると思うんですけど、どうですか? どんな味ですか?

上野さん
ほんとうに自分が作ったのがいちばん美味しいんですよ。それはそうですよね。あんな暑い中、大変な思いをして作るとやっぱりね、うん。何とも言えないですね。

アグリスタート
生でも食べられますよね。自分が作ってきたから愛おしくって。本当にこう、すぐ生でもかじって食べたいなとか、夜ね、あのちょっと軽く炙って焼いて食べたりとか、もう最高ですよね!

上野さん
いや、そうですよね。うん。そういった部分はやっぱりいい。いいですよ。

アグリスタート
では、最後の質問です。これから農業を目指す方にもいろいろおられると思うんです。 新規就農、法人就農、雇用就農、親元就農とかね。半農半Xや兼業農家など、そういったところを目指すみなさまにメッセージはありますか?

上野さん
とりあえず、やりたいと思われるならぜひやられるといいと思います。もう本当にそれだけですよ。 だって農地は見わたす限りあるわけですから。 僕は田んぼを2反してますけど、みんな借りてますからね。 もともと放棄地っていうか、草刈りだけされてるようなところを貸してもらってるんですよ、無償で。 逆に貸主さんから「ありがとう」って言ってもらえるくらいなんです。

アグリスタート
わかります、そうですよね!

上野さん
はい、農業をされる方にもそれぞれいろんな思いがあると思うんですよ。 僕みたいに「地域をもっとよくしたい」っていう思いがあったり、まあそれは農協にいたからっていうのはありますけど。 でも、漠然と「農業って興味があるけどどうしたらいいかわからない」っていう方も、何かね、少しずつやっていくと、そこから新しいコミュニティがどんどん広がっていくというか、それは僕自身すごく感じたことでもあります。 草刈りしてたら近所の人が話しかけてくれるとか。僕ね、笑われてたと思うんですよ、こんな歳で農業をしてるのかって。 みんなから「偉いね」って言われるんですけど、 別に僕はそんな気持ちはさらさらなくて、ただ単にやりたいと思ってやってるだけなんですけどね。 でも、そういう僕みたいな人たちがいろんな方々と繋がっていくものなんだと思います。僕が集落営農に入らせてもらってるのも、結局はそういう繋がりを巡って巡ってお話をいただいたっていうのもありますしね。まずはとりあえずやってみることで、自分が思ってる方向に自然と引っ張られていくような感じがします。 アドバイスになってるかどうかわからないですけど(笑)

アグリスタート
お話の端々から、強い思いといろいろなご苦労を垣間見させていただきました。 上野さん、この度はほんとうにありがとうございました。これからも頑張って下さい。応援しています!

上野さん
ありがとうございます。頑張りますよ!!